お坊さんって社会人なのだろうか
最近こんなことがありました。
スーツを着た女の子に話しかけられた。「会社で社会人の結婚観について調べているんですけど、お兄さん社会人ですか?」
— あきしょー/ 禅坊主 (@zennanshi_ff) 2020年8月30日
「なんともいえない感じですね」
「わかりました!ありがとうございます!」
お坊さんは、社会人・・・?
それにしても物分かりの良い人でした。
「社会人の結婚観」について調べているという女性に話しかけられ、「お兄さん社会人ですか?」と聞かれたのです。
ちなみにその時は私服でしたので、外見から坊さんということは分からないようでした。
聞かれた瞬間に色々なことが頭をよぎります。
「お坊さんって社会人?」
「給料はお寺からもらっているけど」
「でもいわゆる社会人的な働き方はしていないしな」
その結果出てきた言葉が
「なんとも言えないですね」
でした。
社会人は収入がある人?
社会人であるというのはどういうことなのでしょうか。
weblio辞書にはこの様に出ていました。
「社会人」に明確な範囲、定義はないが、本業をどこに置いているかという点で区別されることが多い。
例えば、高校生がアルバイトをしている場合、その本分は「学生」であるため、収入は得ているが社会人とは呼ばない。
卒業してからもずっと職を得ず、保護者の庇護の下で生活している場合もやはり、社会人と呼ばないことが一般的である。
就職をしていたが退職をしたような、一時的な無職の場合は社会人として考えられる。
本業が何か、というのが大事なようですね。
収入を稼いでいれば社会人ということになるのでしょうか。
私は半ば家業としてお寺を継ぐ状態になっていて、給料はお寺からいただいています。
もちろん、一般のサラリーマンの方々よりは全然少ない額です。
そのため、収入・給料というよりは「小遣いを多めにもらっている」というような感覚なんですよね。
これで社会人と言えるのか。
上で引用した部分の一部が胸にグサッと刺さります。
卒業してからもずっと職を得ず、保護者の庇護の下で生活している場合もやはり、社会人と呼ばないことが一般的である。
保護者の庇護下。
いや給料は親の収入からもらっているわけではなくて、お寺からいただいている状態なので、厳密に言えば違うのでしょうけれど、庇護下にあるという意識は正直拭えませんね・・・。
かといって無職という状態でもない。
どういう身の振りをすれば良いのでしょう。
みんな社会人?
weblioの辞書の定義には、もっと広い定義もあります。
「社会人=労働をしている人」という考え方はいささか強引で、例えば、近所の掃除をする、買い物などの日常的な消費活動を行う、PTA活動を行うなどといった行為も、社会を構成している1人ひとりの行動として考えることができる。
つまり、社会への関わりをもっているという点においては、やはり専業主婦も社会人に含まれるものとして考えるのが通例である。
なるほど。
社会に関わっていれば社会人ということになりますね。
これを直接当てはめれば、坊さんも社会人と言って良いことになりそうです。
社会の中で一個人として活動しているわけですから。
ただ、この定義にはいささか問題があるように思われます。
それは、子供も学生もみんな社会人になってしまうということです。
曖昧な社会人とそれ以外との線引き
いや、でもそれで良いのかもしれませんね。
そもそもどうして子供や学生と社会人を分けなくてはならないのでしょうか。
関わっている社会が学校から会社に変わるだけですよね。
個人事業主も増えている昨今では会社にすら属さない人も出てきます。
それに、収入の多い / 少ないもまた意味が無さそうです。
社会人として活動をしていても、一時休職して学問に励む人もいるでしょうし、高校生や大学生の内から企業をして収入を得る人もいます。
インターネットを使って収入を得て、高校生で年収1000万という人も出てきそう、というよりもすでにいそうです。
逆にサラリーマンに疲れ、収入を限りなく減らしてゆったりと暮らしているという人もいます。
この様な人は現代でどんどん増えてきていますし、これからもっと増えていくでしょう。
収入の多い少ないというのは社会人かどうかの線引きとしては使えなくなってきているようです。
「会社人ですか?」という問いならまだしも、「社会人ですか?」という問いは意味をなさなくなっていきそうです。
結局、坊さんは社会人か
さて、「坊さんは社会人なのか」という問いから「社会人は意味をなさない」という話になってきました。
そうは言っても、素朴に「社会人」という言葉は使われますし、これからも 使われていくでしょう。
「社会人ですか?」
そう聞かれた時の答えは、まず社会人をどういう意味で使っているのかを聞いていかなくてはなりません。
答えはふた通りです。
- 「会社に属しているか」だったら、ノー。
- 「社会に関わっているか」だったらもちろんイエス。
そして収入面だったら、それは社会人かどうかを示す基準として不適切なので回答不可能ということになります。
でも、いちいち「社会人をどういう意味で言ってますか?」
と聞かれたらうっとおしいと思われるかもしれないですね。
ひとまず「会社には属していませんが、社会人です」という答えを使っていこうかな、と思います。
社会人あきしょーを、今後ともよろしくお願いします。